医療法人を設立・運営するにあたって、必ず押さえておきたいのが「定款」と「寄附行為」という2つの重要書類です。これらは法人の基本ルールや運営方針を定めるものであり、設立後の行政手続きや税務、労務管理にも大きく関わります。しかし、医療法人特有の制度であるため、「定款と寄附行為の違いがわからない」という方も多いのではないでしょうか。本記事では、医療法人の定款の役割や内容、そして寄附行為との違いについて、行政書士や社労士の視点から詳しく解説します。
医療法人における定款の定義と役割
「定款(ていかん)」とは、法人の根本的なルールを定めた文書であり、いわばその法人の「憲法」とも言える存在です。医療法人においても、設立時に必ず定款を作成し、所轄の都道府県知事の認可を受けなければなりません。定款には、法人名、主たる事務所の所在地、目的、事業内容、理事や監事など役員の構成、社員の資格や入退社の手続きなどが記載されます。
医療法人の定款は、法律(医療法)および厚生労働省令で定められた基準に則って作成される必要があり、その内容に不備があると設立が認可されません。また、定款の変更には都道府県知事の認可が必要であり、軽微な変更でも手続きが求められるため、制度への正確な理解と、行政書士など専門家のサポートが重要です。
- 寄附行為との違いとは何か?
「寄附行為(きふこうい)」は、かつての旧医療法に基づいて設立された「社団医療法人」で用いられていた文書で、定款とほぼ同じ役割を担っていました。しかし、2007年の医療法改正により、新たに設立される医療法人では「定款」を用いることが義務づけられ、寄附行為という用語は廃止されています。現在でも、改正前から存続している医療法人の中には、寄附行為を引き続き使っているケースがありますが、新設法人では定款が主流です。
つまり、現在の制度においては、定款が医療法人の基本ルールを定める唯一の公式文書であり、「寄附行為」とは法改正以前の名残りとして扱われている過去の制度上の用語です。この違いを理解していないと、旧法人の手続きを誤って進めてしまうおそれがあるため注意が必要です。
士業としての支援ポイント
行政書士は、医療法人の設立認可申請において、定款の作成や認可手続きの代行、所轄官庁との折衝などを担います。法令に準拠した定款を整えることはもちろん、医療法人独特の制限(例えば営利目的の禁止、出資持分の扱いなど)を考慮しながら、依頼者の目的に沿った法人設立を支援します。また、社労士としては、定款に記載された役員構成や職務分掌に基づいた人事制度や就業規則の整備、職員の労務管理体制の構築など、実務運営をスムーズに進めるための支援が可能です。
まとめ:医療法人の定款は制度理解の鍵
医療法人の定款は、法人の骨格を形づくる極めて重要な文書であり、正確な作成と運用が求められます。一方、寄附行為は旧制度における同様の文書であり、現在では原則として使われていません。この違いを理解しないまま手続きを進めると、認可遅延や不適切な運営に繋がる可能性があります。
医療法人の設立や運営に関わる際には、行政書士や社労士といった専門家の助言を受けることで、法令遵守を徹底し、安定した医療提供体制の構築に寄与することができます。将来的な法人運営や承継を見据えた戦略的な設計も含め、定款の重要性を改めて確認しましょう。

