医療法人を設立する際、「名称（法人名）」をどう決めるかは重要なステップの一つです。しかし自由に決められるようで、実は法律や制度によっていくつかの制限が存在します。本記事では、「医療法人の名称に制限はあるのか？」という疑問について、制度の背景や注意点を交えて詳しく解説します。
医療法人名に悩む院長・経営者が多い理由
開業医や医療機関の経営者が医療法人化を検討する際、「法人名にどこまで自由度があるのか？」と疑問を持つことは少なくありません。特に個人名や地名、クリニック名との整合性などが関係し、患者の認知度やブランドにも影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。
医療法人の名称に関する結論
医療法人の名称には一定の制限があります。具体的には、「医療法人」という語句を必ず含めなければならず、かつ他の医療法人と混同されるような名称や、公序良俗に反する名称は禁止されています。また、都道府県知事の認可を受ける際には、名称の適切性も審査対象となります。
制度の根拠と具体的なルール
医療法人の名称に関する主な根拠は、医療法第39条および関係省令にあります。以下のようなルールが設けられています。
- 名称には「医療法人」を含めること（例：「医療法人〇〇会」など）
- 同一都道府県内に既存の医療法人と同一・類似の名称は不可
- 虚偽・誤認を与えるような名称は禁止（例：実態がないのに「大学病院」と名乗るなど）
- 公序良俗に反する言葉・表現は禁止
- 特定の診療科名を含める場合は、その科目で実際に診療していることが必要
また、商業登記との整合性や、他の法人（学校法人や社会福祉法人など）との混同も避ける必要があります。都道府県によっては独自の運用ルールや事前相談の体制があるため、事前確認が推奨されます。
よくある誤解
「好きな名前をつけていい」と思われがちですが、医療法人は公益性の高い法人形態であるため、営利法人のように自由な名称設定はできません。また、「すでに使用しているクリニック名をそのまま法人名にすればよい」と考えても、同一名称が既に存在する場合や、診療科との整合性が取れないケースでは修正が求められることもあります。
実務での注意点
医療法人設立時に名称でつまずく例は意外と多くあります。例えば、設立書類提出後に「名称が類似しているため変更を求められる」といったケースや、「診療科名を含めたが実際にその診療を行っておらず却下された」など、都道府県の審査段階で指摘を受けることがあります。
そのため、法人設立の初期段階で、名称案について専門家や都道府県担当窓口に相談しておくことが重要です。ロゴ・看板・ウェブサイトなどの作成を急いで進めてしまうと、後からの修正にコストがかかる場合もあるため注意が必要です。
専門家によるサポート内容
行政書士や司法書士といった専門家は、医療法人設立に関する名称チェックや事前相談のサポートを行っています。具体的には以下のような支援が可能です。
- 名称の適法性チェック（既存法人との類似性調査）
- 都道府県への事前相談の代行
- 登記書類・設立認可書類の作成支援
- 法人設立後の名称変更手続きに関する助言
専門家を通じて進めることで、名称によるトラブルや手戻りを防ぎ、スムーズに設立を完了させることができます。
まとめ：名称は早期に相談・確認を
医療法人の名称には、法的・制度的な制限があるため、自由に命名できるわけではありません。特に都道府県の認可に関わる要素であるため、設立手続きをスムーズに進めるには、早い段階で名称案を確定し、専門家や自治体と連携を取ることが重要です。
不安がある場合は、医療法人設立の実績が豊富な専門家に相談し、名称選定からスムーズに準備を進めていきましょう。