医療法人を設立したいと考える医師や歯科医師の方にとって、「法的にどんな手続きが必要なのか?」「個人開業と何が違うのか?」という疑問は非常に多く寄せられます。医療法人は、一定の法的・行政的ルールに基づいて設立・運営される組織であるため、安易な設立は後々のトラブルや違法状態を招くリスクもあります。
特に、診療所を個人開業していた方が医療法人に移行する際や、家族経営を法人化しようとするケースで注意すべき点が多数存在します。本記事では、医療法人設立における法的要件や注意点を中心に、実務上のポイントを詳しく解説します。
医療法人設立には法的な要件と認可が必要
結論から言うと、医療法人を設立するためには、医療法に基づく複数の法的要件を満たし、都道府県知事の認可を受ける必要があります。これは、単なる法人登記だけでは設立できない特殊な法人形態であるためです。
医療法人は、営利を目的としない公益性の高い法人として位置づけられており、設立の際にはその非営利性や設立目的、構成員の要件などが厳しく審査されます。
医療法人設立に必要な主な法的要件
医療法人を設立するためには、以下のような法的要件があります。
- 設立者の資格
設立できるのは、原則として診療所または病院の開設者である医師または歯科医師が中心です。非医師が単独で設立することはできません。 - 社員(構成員)3人以上
医療法人は社団法人形態を取るため、社員(いわば出資者・運営責任者)が3人以上必要です。夫婦や親子などで構成するケースも多いです。 - 定款・設立趣意書などの作成
法人の目的や組織体制、運営方法を定めた定款、設立の趣旨を記載した趣意書などの書類を作成し、提出します。 - 財産要件
開設する診療所・病院に必要な資産(不動産や設備など)を法人に帰属させること。無借金である必要はありませんが、健全な財務計画が求められます。 - 都道府県知事の認可
上記書類を含む設立認可申請を行い、審査・認可を経て初めて設立可能です。申請時期も年に2~3回と限定される自治体もあるため、スケジュール管理が必要です。
よくある誤解と注意点
「会社のように登記すればすぐ法人になる」と誤解している方もいますが、医療法人は認可制であるため、登記前に認可が必要です。また、営利を目的とする株式会社とは異なり、利益の分配は禁止されています。
もう一つの誤解は、「医療法人にすれば節税になる」という点です。確かに所得分散による節税効果はありますが、法人にすると自由に資金を引き出すことができなくなるため、資金管理の視点が重要になります。
実務で注意すべきポイント
実際の設立手続では以下のような点に注意が必要です。
- 提出書類の不備や記載ミスによる申請差し戻し
- 認可申請の受付時期(自治体により年2~3回)
- 診療所の所有関係が法人名義に変更されているかの確認
- 税務・労務手続の法人化対応(税務署、年金事務所等への届出)
設立後も、毎年の事業報告書の提出や、役員変更時の届け出などが求められるため、継続的な法令遵守が不可欠です。
専門家による支援内容
医療法人設立にあたっては、行政書士や税理士、社労士といった専門家のサポートが非常に有効です。
- 行政書士:設立書類の作成や都道府県への申請業務を代行
- 税理士:法人化後の会計処理、節税対策、事業計画の策定
- 社労士:法人化に伴う労務体制の整備、社会保険手続きの支援
特に、医療法人特有の会計処理やガバナンス構築には専門的知識が求められるため、早期に相談しておくとスムーズです。
まとめ:設立は慎重に、専門家との連携がカギ
医療法人の設立は、通常の法人とは異なり、医療法に基づいた厳格なルールに従う必要があります。設立の目的や将来の運営方針を明確にし、必要な法的要件を整理した上で、信頼できる専門家と連携することが成功のカギです。
特に、設立認可のスケジュールを見落とすと大きなタイムロスにつながるため、早めの準備と情報収集をおすすめします。

