医療法人を設立・運営する際、避けて通れない重要書類のひとつが「業務及び財産の概況書」です。この書類は、医療法人の事業内容や財務状況を明確に示すものであり、都道府県などの行政機関に対して、法人の健全性や継続的な運営能力を証明する役割を果たします。設立申請、分院開設、役員変更、定款変更、さらには毎年の事業報告時にも必要となるケースがあるため、医療法人に関わるすべての関係者がその内容と意義を理解しておく必要があります。
医療法人における「業務及び財産の概況書」の定義
「業務及び財産の概況書」とは、医療法人の業務(診療内容・運営体制・人員配置など)および財産(資産・負債・収支状況など)について、客観的かつ定量的に示す報告資料です。医療法人が健全な経営を継続しているか、将来的にも適切な医療サービスを提供できる能力を有しているかを判断するための根拠資料として位置付けられています。
行政機関が審査する際、この概況書を通じて医療法人の信頼性や経営実態を把握するため、形式的な記載ではなく、実態に即した正確な情報が求められます。特に新規設立や定款変更、合併・分割といった大きな変更時には、この書類の内容が審査結果に大きく影響します。
記載内容と求められる情報の具体例
医療法人の「業務及び財産の概況書」には、以下のような情報が記載されます:
- 医療法人の名称、所在地、設立年月日
- 理事長・理事・監事など役員構成とその職務内容
- 医療機関の種別(病院、診療所、介護医療院等)および所在地
- 各施設の診療科目、職員数、診療体制
- 直近の収支状況(収入・支出・差引額)
- 資産内容(現金・預金・土地・建物・医療機器など)
- 負債の内訳(借入金・未払金・リース債務など)
これらの情報は、事業報告書や財産目録、貸借対照表、損益計算書などと整合性が取れていなければなりません。士業としては、行政書士が中心となり、書類の作成・提出代行を担うほか、税理士や公認会計士が財務データの検証を行うことが一般的です。
提出が求められる主なタイミング
医療法人において「業務及び財産の概況書」が求められるのは以下のような場面です:
- 医療法人の新規設立申請時
- 医療法人の合併・分割・定款変更時
- 分院(従たる事務所)の設置・移転・廃止
- 毎年度の事業報告時(多くの自治体で提出義務あり)
とくに年度末の「医療法人事業報告書」の提出においては、業務及び財産の概況書が核となる書類です。提出期限や様式は都道府県によって異なる場合があるため、早めの準備が重要です。
行政書士・社労士による専門的支援の必要性
業務及び財産の概況書は、単なる数字の羅列ではなく、法人の全体像を行政に対して説明するための戦略的資料です。書類の整合性や信頼性が乏しい場合、行政からの補正指示が発生したり、認可・許可の遅延に繋がる恐れもあります。
行政書士は、医療法人制度や都道府県の指導要綱に精通しており、最新の法令や様式に基づいた記載内容のチェック、補足資料の作成などをサポートします。また、社労士は、職員数や配置基準、労務管理に関する記載内容の正確性を担保し、法令遵守を支援する重要な役割を担います。
ミスや誤解を防ぐためには、申請書類全体を一貫して管理できる士業との連携が非常に有効です。
まとめ
医療法人における「業務及び財産の概況書」は、設立・運営・変更において不可欠な書類であり、正確性と信頼性が行政からの審査に直結します。複雑な記載事項や財務情報の整合性を保つには、行政書士・社労士などの専門家の支援が重要です。
今後、医療法人の設立や分院展開、承継を考える経営者は、この概況書の意味と重要性を十分に理解し、専門家と連携して計画的に準備を進めることが成功の鍵となるでしょう。

