医療法人の設立を検討する際、「士業に依頼すべきか、自分でできるのか」と悩む方は少なくありません。医師や歯科医師の方が診療所を法人化することで節税や事業承継のメリットが期待できますが、設立には複雑な手続きと専門的な知識が求められます。この記事では、医療法人の設立を自力で行うことのリスクや、士業に依頼することで得られる安心感について詳しく解説します。
目次
医療法人の設立は専門家に依頼すべき?
結論から言えば、医療法人の設立は行政書士や司法書士、税理士などの士業に依頼するのが望ましいです。医療法や会社法、税法などの幅広い知識と経験が必要であり、書類不備や手続きミスによって設立が認可されないリスクもあるためです。
医療法人設立の仕組みと法律上のポイント
医療法人の設立は、個人事業である診療所やクリニックを法人化することで、経営の透明性を高めたり、相続対策を講じたりする目的があります。しかし、一般の会社設立とは異なり、医療法に基づいて都道府県知事の認可が必要です。
また、設立には定款の作成、社員(構成員)の選定、財産拠出、事業計画の作成、収支予算書、設立趣意書など、非常に多くの書類が必要です。都道府県によって審査基準や提出様式が異なる場合もあり、これを個人で適切に対応するのは難易度が高いのが現実です。
よくある誤解:会社設立と同じ感覚でできる?
医療法人も「法人」という言葉がつくため、株式会社の設立と同様に考えてしまう方がいます。しかし、医療法人は営利を目的としない「社団法人」であり、利益配分の制限や定款の制約、ガバナンス構造など独自のルールがあります。
例えば、医療法人は出資持分のない「持分なし法人」として設立するのが一般的で、出資者に解散時の財産分配が行われないため、個人事業のような資産形成の感覚では成り立ちません。この点を理解せずに法人化を進めると、後で後悔するケースも見られます。
実務での注意点とよくあるトラブル
医療法人設立には、設立まで少なくとも8か月程度の準備期間が必要です。事前協議から始まり、申請書類の作成・提出、認可取得、法務局での登記、厚生局への届出など多岐にわたります。
よくあるミスとしては、社員の選定条件を満たさない、事業計画書の整合性が取れていない、収支予算が非現実的と判断されるなどがあります。これらは都道府県の審査で指摘を受け、設立スケジュールが大幅に遅れる原因になります。
士業の支援内容と依頼のメリット
行政書士や司法書士、税理士などの士業は、以下のような点で医療法人設立をサポートします:
- 必要書類の作成とチェック
- 都道府県との事前協議や提出書類の調整
- 定款や設立趣意書の文案作成
- 法務局での登記手続き代行
- 税務・労務の法人化対応アドバイス
これにより、手続きの抜け漏れを防げるだけでなく、経営や税務面での最適な法人形態をアドバイスしてもらえるという大きな利点があります。
まとめ:士業への依頼はリスク回避と成功の近道
医療法人の設立は、制度的にも実務的にも高度な知識が求められる分野です。手続きの正確性と計画性が設立の可否を左右するため、自力で行うには限界があります。士業に依頼することで、安心して本業に専念できる環境が整い、スムーズな法人化が実現します。
設立をお考えの方は、早めに信頼できる専門家に相談することをおすすめします。

