医療法人の設立における定款のポイントとは?失敗しないための注意点と作成ガイド
医療法人を設立する際、定款の作成は非常に重要なステップです。しかし、定款の内容に不備があると設立認可が下りなかったり、後々の運営に支障が出ることもあります。特に医療業界特有の法的規制や構造を正しく反映させる必要があるため、一般の会社設立とは異なる注意点が多く存在します。
この記事では、「医療法人の定款にはどのようなポイントがあるのか?」という疑問に対し、制度的な背景から、よくある誤解、実務上の注意点、専門家の支援内容までをわかりやすく解説します。
目次
結論:定款は医療法人の設立と運営の「設計図」。法令に即した内容が必須
医療法人を設立する際の定款は、単なる形式文書ではなく、法人運営の基本となる重要な「設計図」です。記載内容が法律に適合しているかどうかが、設立認可の可否を大きく左右します。
医療法などの関係法令に則って、名称・目的・事業内容・役員構成・拠出金などを正確に定める必要があります。一般社団法人や株式会社とは異なる特有のルールが存在するため、医療法人特有のポイントを押さえた定款作成が求められます。
定款作成における重要ポイントの解説
医療法人の定款で押さえるべき主なポイントは以下のとおりです:
- 法人の目的・名称
- 「医療を提供すること」など、公益性を前提とした明確な目的が求められます。
- 名称には「医療法人」を含める必要があります。
- 事業の種類
- 病院・診療所・介護老人保健施設など、医療法で定められた範囲内で明記する必要があります。
- 主たる事務所の所在地
- 所在地は都道府県ごとに所轄庁が異なるため、設立手続きに影響を及ぼします。
- 社員(構成員)の規定
- 医療法人は「持分のない社団」であり、社員が法人の意思決定機関となります。
- 役員の規定
- 理事長を含む理事・監事の人数や選任方法を定める必要があります。
- 利益相反防止の観点から、親族関係の制限なども考慮します。
- 基金(拠出金)に関する規定
- 持分がない法人である以上、出資ではなく「基金拠出」という形式をとります。
- 事業年度や議決権に関する事項
- 会計処理や社員総会の運営に直結する内容のため、慎重な記載が求められます。
これらの記載事項は、設立認可申請時に所轄庁から厳しく審査されるため、誤りや曖昧な表現があると補正や再提出を求められることになります。
よくある誤解とその注意点
医療法人の定款作成に関して、以下のような誤解が見られます:
- 「会社設立と同じように作ればよい」と考える
→ 医療法人は非営利法人であり、営利法人である株式会社とは設立趣旨も法的要件も異なります。 - 「医療行為以外の事業も自由に記載できる」と思ってしまう
→ 医療法人は原則として医療関連事業に限定されており、附帯事業の範囲も厳しく制限されています。 - 「持分あり医療法人でも良い」との認識
→ 現在は持分のある医療法人の新設はできず、すべて「持分なし」の医療法人になります。
こうした誤解が原因で、設立申請が認可されなかったり、後に法人運営が問題となるケースも少なくありません。
実務での注意点:都道府県ごとの審査基準と事前相談
医療法人の設立は、所在地の都道府県知事の認可が必要です。そのため、定款の内容についても各自治体の審査基準に準拠する必要があります。
特に注意すべき点:
- 定款案は設立認可申請書とともに提出されるため、作成時点で十分な精査が必要
- 自治体によっては「事前相談」が必須であり、その段階で定款内容を確認されることも多い
- 不備があれば補正が必要となり、スケジュールに大きな影響を与える
このように、形式上の書類作成というよりも、行政との綿密な調整が求められる実務となっています。
専門家による支援の重要性
医療法人の定款作成は、専門的な知識と経験が求められる分野です。行政書士は、以下のような形で支援が可能です:
- 法律に適合した定款案の作成支援
- 各自治体の審査基準を踏まえた修正アドバイス
- 設立認可申請書類の作成・提出代行
- 医療法人設立後の運営・変更届等のサポート
特に、医療法人特有の規定や要件に不慣れな場合は、専門家の支援を受けることでスムーズかつ確実な設立が実現できます。
まとめ:医療法人の定款は「最初の一歩」にして最も重要なステップ
医療法人の定款は、設立の根幹をなす非常に重要な文書です。内容に不備があると設立認可が得られなかったり、後々の法人運営に支障を来す可能性もあります。
確実な定款作成のためには、制度の正確な理解と各自治体の運用状況に応じた対応が不可欠です。迷った場合は、行政書士などの専門家への相談をおすすめします。
適切なスタートを切ることで、安定した医療法人運営への第一歩となるでしょう。

